DQ10 まめぞぅのエリンギ便り

おもちハザード 〜プロローグⅡ〜

      2016/10/08

icon-michiku「ねぇねぇ。このみかん、体が生えているよ。」

icon-nabe「みかんに体が生えているんじゃなくて、頭がみかんになっちゃってるんじゃないかな?」

 

未知のみかんを見て驚くこともなく、冷静に観察をはじめるみぃちくとなべ。さすがこの世界の住人だけあって、おかしなものに対して免疫があるようだ。

 

icon-monika「この胸毛、尻尾……。ひょっとしてプクリポじゃないかな?」

 

さっきまで慌てていたモニカも落ち着きを取り戻したようで、みんなに続き観察を始めた。

確かにおかしいのは頭だけで、それ以外はプクリポそのものだった。ただのみかんならなんてことないが、行き倒れのプクリポだとしたらナースとして助けなくてはいけない。

 

icon-mamena「とりあえず、ベッドに運ぼうよ。」

 

プクリポらしきみかんに手を伸ばそうとしたとき……。

 

icon-kouran「触るなっ!」

icon-mamena「え?あ、院長!」

 

未知の病気

icon-kouran「よくわからない病気かもしれないのに、素手で触ろうとするとは何事かっ!」

 

行き倒れの患者を目の前にしていたとはいえ軽率だった。確かに細菌やウィルスによってみかんになってしまうのだとしたら感染の危険性がある。未知であるからこそ、慎重に行動しなくてはならない。

 

icon-nabe「防護服を用意しました。」

 

さすが出来る子だ。

 

344445687

感染予防の措置が図られ、院長による診察が始まった。

実はこの院長、無類のみかん好きで頭のお団子の中にみかんを隠し持っているほどだ。あまりに好きすぎて、患者のいない時間はずっとみかん研究に没頭している。この病院には患者など一人も来ないので、つまりずっとみかんの研究をしているのだ。

 

icon-mamena「あ~ぁ、普段患者なんてこないのになんで今日に限って……。」

 

今日はナース集会の日、残業などしている暇はないのだった。

 

icon-nabe「意識が無いとは言え、患者さんの目の前でそんなこと言わないのっ!」

icon-michiku「大丈夫だよ。みかんといえば紅蘭院長だもの。きっとすぐ終わるよ。」

 

それを聞いた院長は複雑な顔をした。

 

icon-kouran「ナース集会には間に合うよ。」

 

その言葉にその場に居たナースたちは心なしかホッとしたような顔をした。

 

icon-mamena「なんだよ。結局みんな残業が嫌なんじゃん。」

 

ひとり悪者にされて少しムッとしたが、院長の言葉を聞いてそんな感情は一瞬で消えた。

 

icon-kouran「残念ながら手遅れだよ。私にもどうしようのないところまできている。ほら、右側蜜柑部を見てごらん。青白くなっているだろう?」

icon-nabe「ひょっとして……カビですか?」

icon-kouran「そう、すでに腐ってきているんだ。こうなっては手のつけようがないし、私でも美味しくいただくことはできないのだよ。」

icon-mamena「……食べるつもりだったんですか?」

icon-kouran「はは、冗談だよ。冗談。」

 

院長の目は笑っていなかった。

 

腐ったみかん

icon-kouran「腐ってしまった以上このままにはしておけないな。私の大事な他のみかんを腐らせてしまう。」

 

腐ったみかんをそのままにしておくと、他のみかんまで腐らせてしまう。しかもこのみかんの場合、腐敗のスピードが目に見えて早い。内圧が高まっているのか、時折腐った部分からみかん汁が飛び出してきている。

 

icon-kouran「みかんだけでなく、もしかするとプクリポや他の種族にまで感染する可能性がある。早急に隔離したほうがよさそうだね。」

 

344493036

頭がみかんになってしまったプクリポは病院の奥、閉鎖病棟に隔離された。

 

みかんの正体

みかんプクリポのせいで今日はずっとバタバタしていた。持ち物の中からみかんプクリポのことがわかった。名前は「おもち」というらしい。みかんなのかおもちなのか混乱しそうだが、どちらもカビが生えやすい事を考えるとどちらでもいいのかもしれない。

 

icon-michiku「おもちさんを助ける方法……、ほんとに無いのかな?」

icon-mamena「院長でも手に負えないのだから難しいんじゃないかなぁ。」

icon-nabe「そういえば昔、段々と石になっていく少年がいたよね。その時もお手上げだったけど、不思議な雰囲気が漂う冒険者が助けてくれたよね。」

 

昔、この病院に病気の少年がいた。トゥーラの名手であったが、段々と石になっていく奇病にかかってしまい、トゥーラを弾くこともままならなくなってしまった。私たちも力を尽くしたが、石化を止めることはできず万策尽きたかに思えた。そんななか現れた不思議な雰囲気を纏う冒険者が、少年を救ってくれたということがあった。

 

icon-michiku「あったあった。あの時の冒険者さんなら、おもちさんのことも助けてくれるかもしれないね。」

icon-nabe「そう都合よく現れてくれるかな……。」

 

そもそも、その冒険者が現れたところでおもちを救えるかどうかもわからないが、可能性がある限りそれに掛けてみたいもの。そこに都合よく現れたのが……。

 

icon-nikuwo「あ~、だりぃ。患者いね~のになんで夜勤があるんだよ。」

 

不思議な雰囲気を纏った冒険者ではなく、倦怠感を纏い至極真っ当なことを言い放つにくをだった。

 

引き継ぎ

20160929094554.jpg

icon-michiku「あ、にくをちゃん。今日はいつもと違って患者さんいるんだよ~。」

 

普段と違う状況が嬉しいのだろうか。軽くはしゃぎつつそう言った。

 

icon-nikuwo「まじで?抜け出してナース集会行こうと思ってたのに……。」

icon-nabe「残念だったね。しかもこの患者さん、隔離されているからちゃんと見張っていないとだめだよ。」

icon-nikuwo「どれどれ……。意識ないのか。ふ~ん。」

icon-nabe「駄目だからねっ!」

icon-nikuwo「何も言ってないじゃん。」

 

申し送りでにくをに念を押し、私たちは待ちに待ったナース集会に向かおうとしていた。

 

icon-mamena「とはいえ、まだまだ時間があるね。」

 

日勤の就業時間は17時で、ナース集会の時間は22時。5時間もある。

 

icon-kouran「今日はお疲れ様。時間もあることだし軽く飲みに行こうか。」

icon-michiku「院長もナース服を着るんですか?」

icon-kouran「もちろん。今日はそのお祝いだろう?」

icon-nabe「お似合いですよ。いっそのことナースに転職しませんか?」

icon-kouran「ははは、それもいいね。」

 

朝の緊張感はすでになく、冗談を交わしながらナース集会までの時間を潰すため、セレドの町の酒場へと向かった。

 

失踪

一方、病院では夜勤のにくをが定時の巡回をしていた。

 

icon-nikuwo「サボってナース集会いっちゃおうかな~♪」

 

鼻歌交じりのにくを。入院患者はおもち一人だけなので、巡回と言っても楽な仕事だ。

いや、楽な仕事のはずだった。閉鎖病棟のドアについている覗き窓を覗いたにくをは、ただでさえ青い顔がさらに青ざめた。

 

icon-nikuwo「……いね~じゃん。」

 

おもちハザード ~プロローグⅡ~